新軍事ドラマ:「中隊本部」
どこにでもある(?)陸上自衛隊普通科中隊の日常を描く
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国民の御盾とならん:33
宴会は大いに盛り上がり、隊員クラブ閉店の時間に合わせて2次会突入となった
当然ながら会場は駐屯地外の飲み屋だ
「…という訳で、2次会に行く者は挙手!」「は~い!」「オレも行きます!」何人かの手が挙がると、声をかけた井上3曹が挙がった手を数え始めた
「8人か…ほな『味吉』でええか?」「りょうか~い」「じゃあ着替えて正門前に集合で!」散らばり始める小隊の面々
「あれ、小野3曹は行かないんですか?」若い隊員が小野3曹に声をかける「いや、オレは…」「いいじゃないっスか、行きましょうよ~」
その頭をむんずと抑えたのはいつもなら真っ先に誰彼ともなく誘う井上だ「まぁまぁええから…ほら、小隊長誘ってこんかい」そう言ってその若い隊員を小隊長の元にけしかけた
「おい、井上…」いつもと違う対応に小野が当惑した顔を見せる「まぁまぁ、今日は他に用事があるんやないですか?」「え…まぁ」「こっちはこっちで盛り上げますから、例の彼女さんのところに行ったって下さい」
「お前、まさか聞いて…」「ん?何の話です?」すっとぼけた顔を見せられて小野は(まぁいいか)と思った
「わかった、それじゃお先…ありがとな、井上」「いやいや、ほなまた明日!」そう言って小野を見送る井上に声をかけてきたのは「おい、井上…若い連中に帰隊遅延させんなよ?」飲み会に混ざっていた田浦2曹だ
「わ~ってるって、心配やったらお前も来たらええやん」「いや、2次会は3小隊ばっかだしな。それに…」振り向いた先にはクラブ前の立木に寄りかかっている赤城3曹の姿があった
「赤城がだいぶ酔ってるみたいでな。WAC隊舎まで送り届けてくるわ」「そっか、そんなに酔ってるんか?おい、赤城、大丈夫か」声をかけられて赤城が真っ赤になった顔を向けた
「あ、はぁい…大丈夫です~」そう言って笑いながら軽く手を振った「…まぁ顔が赤いうちは大丈夫やろ」「まぁそうだな。それじゃ行ってくるよ、じゃあな」田浦が赤城の元に向かった
とその時、井上が赤城に呼びかけた「赤城!」振り向いた田浦と赤城に向けて軽く左手を上げて人差し指と親指を立てた。そしてそのまま人差し指を数回曲げて、最後に手を前に数回振った
「ほなまた明日」そのまま彼は立ち去っていった

「手信号か…確か『攻撃、開始』の合図だっけか?」迫小隊の田浦は近接戦闘における手信号にはイマイチ不慣れだ「そうです」その意味に気づいた赤城が少し顔を赤らめる
「じゃあ行くか、歩けるか?」「あ、は、ひゃい!」腕を取られ少し身を固くする、休息に酔いがさめ、別の意味で顔が赤くなるのがわかった
WAC隊舎までは数百m、ほとんど街灯の無い駐屯地内の道を歩くと時おり帰隊してくる隊員とすれ違った
(攻撃…かぁ、確かにちょっと積極的にいってみようかな?)横並びで歩く田浦の腕に触れようと手を伸ばす。とその時、腕に白い湿布が貼られているのに気がついた
「あ、その湿布…」「あぁコレ?出動中に椅子で殴られた時の怪我だよ」自分のミスでできた傷を見て、赤城は少し顔を伏せた。少し浮かれていた気分が少し沈む
「すみません、あの時は…」「ん?気にするな。この位だったら怪我とも言わないよ」そう言って田浦は笑った
「ワタシ、まだまだダメですね~なんか皆さんの足を引っ張ってるみたいな…」苦笑いしつつもその声は少し固い。その様子を見て田浦は口を開いた
「そうか?お前はよくやってるよ。もっと自信もっていいんだぞ」「そうでしょうか…?時々、というか今回みたいなことがあると、ちょっと自信をなくしちゃいます…」
WAC隊舎のすぐ近くまで来た二人、田浦が足を止める「赤城、お前自身はどうなんだ?今の仕事についていけない…と思うことがあるのか?」
「え…」少し考える「時々はしんどいですけど、楽しいと思います。たぶん…」
「だったらいいじゃないか」きっぱりと言いきる「自分がいいと思ってるんだろ?だったら悩むことはないさ」
「で、でも!」少し声を張り上げる「ワタシのせいでみんなの足を引っ張るようなことがあったら…」「それはない」またしてもきっぱりと言い切った
「オレが椅子で殴られた時も、すぐに反応して相手を取り押さえてたじゃないか。いい動きだったと思うぞ?男性隊員でもそこまで動けるヤツが何人いるか…」
今思うとあの時の赤城の動きは見事だった。格闘技経験の無い隊員だとあそこまで動けるかどうかわからないな…と田浦は思う
「オレは中隊配属になった時から赤城を見てきた。その上でオレはお前を信用している、お前はどうだ?オレが信用できないか?」「いえ、信用してます!」
田浦は赤城の肩に手をおいた「だったら、オレの言葉も信じろ。お前はできるヤツだ、もし戦争になっても背中を預けられるほどに、な」
「…はいっ!」顔を上げて満面の笑みを浮かべる赤城。とその時、肩におかれた腕の湿布の横に擦り傷があるのが目に入った
「あれ?その傷…」「あぁ、打ち身と同じであの時に怪我したんだ。もう治りかけてたんだけど、飲み会の最中にどっかでこすったみたいだな」
田浦が傷口を覗き込むと、うっすらと血がにじんでいた。その時、赤城の両手がその腕を掴んだ。そして…

「…!」赤城の口が田浦の腕の傷口に触れた。柔らかい感触に一瞬、田浦の思考が停止する
ようやく腕から唇を離して赤城が田浦の顔を見上げた。真っ赤になっているのは酔いのせいだけじゃないだろう、そして自分も同じ顔をしてるかもな…と田浦は思った
「それじゃ、おやすみなさいっ!」回れ右をしてものすごい早さで赤城はWAC隊舎に入っていった
「…生殺しかよ」そう言いつつ田浦は夏の夜空を見上げて笑った。そして携帯を取り出しダイヤルする
「もしもし、井上か?今から2次会、参加しても大丈夫か?…あぁ、ちょっと飲み直したくなってな…」
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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