新軍事ドラマ:「中隊本部」
どこにでもある(?)陸上自衛隊普通科中隊の日常を描く
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国民の御盾とならん:28
高いエンジン音が鳴り響く中、3分隊長の小野3曹はメモ帳を片手に輸送機の屋根を見つめていた
何やら書こうとしてその都度手が止まる、もうその動きを10回は繰り返していた
数分前、中隊長に集められて「戦闘機に追跡されている、万が一の覚悟はしておいてくれ」と言われたが…
(万が一の覚悟って言われてもなぁ…何すりゃいいんだ?)とりあえずは分隊の連中に今の状況を伝えた。驚くヤツ、きょとんとするヤツと反応はそれぞれ
泣き叫んだりパニックになったりしないのは、今の自分と同じように状況がピンと来ていないからか?
とりあえずこういう状況でのお約束として遺書でも書こうかとメモ帳を手に取ったが、さてここで誰に何を書こうかと迷ってしまう
出動前に遺書を書いてるヤツもいたが、なんだか遺書を書いたら逆に死にそうでイヤだったので自分は書かなかったのだ
それを今さら書こうと思っても、そう簡単に書けるものじゃない…11回目を諦めて小野はメモ帳を懐にしまった
(まぁいいか、どうせあと少しで日本の領空だ)
そう思い横の井上3曹をちらりと見る、すると殊勝な顔をしてメモ帳に何かを書いていた
肘で体をつつき、顔を上げた井上に「何を書いてるんだ?」と大声で聞いてみた。井上はニヤリと笑い、手にしたメモ帳を小野に見えるように揚げた
大きく書かれた『我が人生に一片の悔い無し』の文字を見て絶句する小野
「お…お前なぁ」呆れたような顔をすると、井上はしてやったりの笑顔を見せた「ええでしょ?たぶん週刊誌の話題独占でっせ」と歯を見せた
「まぁ…別に最後になんか言いたい相手もおらんからええんですけどね。小野3曹は?誰かに最後に言いたい事がある人っておらんのでっか?」
「え…」そう聞かれて小野は言葉を失った。「…?」怪訝な顔をして様子をうかがう井上だが、反応がないのがわかると肩をすくめた
そしてそのままメモ帳を懐にしまい、耳栓を耳から取り出しイヤホンを代わりに差し込んだ。そして手元にiPodを取り出して慣れた手つきで操作して、行きの機内で聞いてたノリノリのロックに合わせて体を揺らし始めた
そんな井上に目もくれず小野は考えていた(最後に言いたい事がある人…か)
その時、脳裏に浮かんだのはまだ存命中の祖父母でも両親でも兄弟でもない…付き合っている彼女の顔だった
(そうだよな…そりゃそうだ)何か吹っ切れたようないい気分になり、肩の力を抜いて座席に深く腰掛けた

数分後、隣りの座席からメモ帳が回ってきた
『無事ADIZに到達、あと1時間以内に到着予定』その文字を読み、小野は(帰ったら…)とある事を決意した
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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