新軍事ドラマ:「中隊本部」
どこにでもある(?)陸上自衛隊普通科中隊の日常を描く
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国民の御盾とならん:10
輸送隊の大型トラックに荷物を積み込む段になり、中隊の雰囲気が少し変わってきた
(やはり実際に動くとなると現実感が湧いてくるのかな?)と森口3尉は思った
ただ、過度に緊張したりビビったりしている隊員がいないのに少し驚いた。といっても表面だけしか見ていない状況なので何とも言えないが…
「明日の午前中に空自の基地へ移動、この時は他中隊の車両で移動する。向こうに着いたなら…」明日の動きに着いて細かい指示を出しながら、森口は小隊一同の顔を伺う
中隊長に言われた「適度な緊張感」は大丈夫…あとはガチガチに固まっていないかだが、これは正直見た目だけでは何とも言えない
しかし誰よりも緊張しているのは自分のような気がする。まさか入隊して2年も立たないうちにこんな事態に巻き込まれるとは…
そんな気持ちをなんとか表に出さないようにする「それでは、明日の移動に備えて今日はゆっくり休むように、別れ」
そう言って小隊は解散となった

「小隊長、なんや緊張しとったな」部屋に戻ってきた井上3曹が言った「あんなんで大丈夫かいな?」
「そりゃ仕方ないよ。下手したら陸士と経験だけは変わらんのだから」とフォローを入れる田浦2曹
「しかし、ホンマに動くとなるとみんなの顔つきも変わるもんやな~」という井上の様子は普段と全く変わりない。狙撃手の指定を受けているクセして非常に大雑把で何も考えていないのはいかがなものか…と田浦は思った
「ま、でも家族に電話くらいはしとかなアカンやろうな」「お?意外と常識的だな」と感心する田浦
「…意外と、ってどういう意味や…」と不本意そうな井上「まぁ彼女とかに電話するヤツは大変やろな~マスコミがいろいろいらん事言うて煽っとるしな」
部屋のテレビでもニュースをやっているが、現地の暴動でも一番危なそうな映像を繰り返し流したり、怪しげな評論家が内戦の危機だの戦闘の可能性だの無責任な事ばかり言っている
こういう報道で一番苦しむのは隊員ではなく、その家族や恋人だったりするのだが…
「俺はいないからいいや。井上は?」「おらん、というか田浦…」ここで珍しく井上が真剣な顔になった「赤城の事はどうするんや?」

「へ?赤城がどうかしたのか?」「…やっぱり気づいてへんのか、朴念仁やなぁ。赤城はお前に気があるみたいやぞ」
「まさか」と一笑に付す田浦「何を根拠に?」
「カン、というか見た目や。そうやなかったら毎日あんなに引っ付いて飯とか行ったりせんやろ?それに自分では気づいてへんやろうけど、けっこうアイツは田浦の方ばっかり見てるんやで」
「んな馬鹿な、勘違いだよ。中隊配属の時から面倒見てるからなつかれてるだけだよ」「…そうか?まぁそう思うんやったらいいんやけど」

「…クシュん!」と大きなクシャミをして、慌てて口を隠す赤城3曹「先生、カゼ?」と顔を覗き込むのは、時々顔を出している空手道場の生徒だ
「いや、違うよ~誰か噂してるのかな?…じゃ、気をつけて帰ってね」「押忍、ありがとうございました~」と元気よく道場から帰っていく子供たちを見送った
「赤城君、お疲れさま。今日も来てくれるとは思わなかったよ」道場の師範代が声をかけてきた
「いや、なんか体を動かしたい気分でして…」「いろいろ大変なようだね、ニュースで見てるよ。赤城君もC国に行くのかな?」
「はい、あ…秘密だったんだ」あわてて口を押さえる「あの…誰にも言わないでくださいね?」
「今日の動きを見てて思ったが…何か迷いとか悩みがあるんじゃないか?やっぱり恐怖とかあるのかね」
「いや、そんなわけじゃないんですけど…」いろいろ気になる事があるのは事実、派遣任務の事も、そして田浦2曹の事も…
「あの、師範代…今まで危ない目に遭った事ってあります?」「ん?あぁ…あるよ」「参考に聞かせてもらっていいですか?」
「え、う~ん…ちょっと恥ずかしいが…ま、いいでしょう」と渋い顔をする師範代
「若い頃に町の盛り場でヤクザ2人と喧嘩してね。そのときに相手が短刀と拳銃を持ち出した時が危なかったな」「拳銃!?うっわ~…危ないですね」
「もともとウチの流派を開いた人が、町中の喧嘩や道場破りとかで名を売った人だからね。だから私もいろんな店の用心棒をやってたんだよ」
そう言って師範代は左腕の袖をまくった。そこには数センチの長さの傷跡が残っている
「そのときに斬りつけられたのさ。まぁ何とか二人とも倒して助かったんだけどね」「その時って、恐怖とか感じました?」
「いや…それが意外と感じなかったね。体が先に動いたっていうのかな?今思うとよくあんな事ができたな…と感心するよ」そう言って師範代は笑った
「私は君たちの仕事に関してはよくわからないけど、今まで積み重ねてきたモノがあるなら大丈夫じゃないかな?まぁいろんな人に話を聞いたらいいよ」
「そうですね、そうします。今日はどうもありがとうございました」そう言ってぺこりと頭を下げる
「気をつけてね。お土産話、期待してるよ」「押忍、それでは失礼します」

道場を出た赤城は携帯を取り出してボタンを押した
数回のコールのあと『もしもし、龍子か?』電話に出た相手は赤城の父親、海自の地方総監でもある赤城海将だ
「あ、お父さん…うん、別に用事ってわけじゃないんだけど…」『話は聞いてるよ。例のNEOだろ?気をつけて行ってこいよ』
「やっぱり知ってたんだ。あのさお父さん…現場で働いてた時、危ない目に遭った事ってある?」
『まぁ、あると言えばたくさんあるけど、携帯で話していいことか…ま、いいか。1つだけな』ギシッ、と椅子のきしむ音が聞こえた
『北海道で哨戒飛行中にソ連の潜水艦を発見して追っかけたんだが、相手の領空ギリギリまで入り込んで逆に向こうの戦闘機に追っかけ回されたんだ。まだ独身の頃だから、もう30年近く前か…』
「へぇ~お父さんも大変だったんだね」
『まだ荒っぽい時代だったからな』
「でさ、その時ってどんな事考えてたの?やっぱり『生きて帰るぞ~』とか?」
『いや…』少し言葉を切る赤城海将『自分の任務を果たす事だけ考えたな。当時は母さんと付き合い始めた頃だったんだが、そんな事を考えたら逆に冷静になれなかったんじゃないかな?と思うな』
「ふ~ん、そっか…」『何だ、不安か?』「いや、そういうわけじゃないんだけどね。それじゃ、また帰ったら電話するね」
『あぁ、母さんにも電話してやってくれ。兄弟どもは別にいいや。あいつら連絡もしてこないしな』そう言って笑い声が聞こえてきた
「わかった、じゃ、おやすみ」そう言って赤城は電話を切った

(自分の任務を果たす事だけ…か)少し考え顔を上げる
「よし、頑張ろう!」そう大きな声で言って、彼女は駐屯地に足を向けた
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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