新軍事ドラマ:「中隊本部」
どこにでもある(?)陸上自衛隊普通科中隊の日常を描く
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残る桜も散る桜:その3
「ところで次の中隊長はどんな人ですか?名前しか聞いてないんです」
中隊長によって中隊のカラーは決まる。新しい中隊長がどんな人かというのは中隊の隊員全員が一番知りたがっている情報でもある
「あぁ…確かメモが」そう言って中隊長は机の引き出しを探り始めた
「名前は氷室…氷室陽二1等陸尉、年齢がまだ30歳だって」「30?えらく若いですね。やはり防大出ですか?」
「あぁ、今はCGSに行ってるって。卒業してすぐに中隊長上番というわけで…」

CGS…指揮幕僚課程は高級幕僚になるために必須の教育であり、難しい試験を突破した年間数十名の幹部しか入校できない
連隊長や将官のほとんどがこのCGS出身者である

「CGSを出てすぐ中隊長というのは、相当優秀な人なんですね」「らしいよ。将来の将官候補だとか…」
「そりゃ大変なことになりそうだな…」と先任は難しい顔をして腕を組んだ
「私も直接会った事は無いんで、何とも言えませんな。今度の日曜に申し受けに来るって言ってたよ」
「そうですか…では私も日曜に顔を出します」ここで思い出したように先任が顔を上げた「そうだ、その週の金曜日は中隊の送迎会ですね」
「あ、そうだったか…来週はエラい事になるな」手元のメモ帳をめくって中隊長はつぶやいた「月曜が修身会、火曜はレンジャー同期、木曜が中隊本部の宴会か…」
勤務や教育が多いほど、異動の際の宴会は多くなる。元○○連隊、元××教育、修身会、曹友会、現所属の中隊・小隊そして営内班等…
経歴や階級が上がるほど、3~4月と7~8月は飲み会の機会が多くなる(そして店側にとっても書き入れ時)
「…キツいな」「まぁ無理しないで飲んでください」と笑いながら先任は中隊長室を後にした

先任が去って静かになった中隊長室
書類から目を上げて、中隊長は少しだけ物思いに耽る
縦に長い8畳間ほどの中隊長室、机の上には中隊長の名前が書かれた木の札が置いてある。机の前には机とソファーの応接セット、右側の壁には連隊の守備隊区を示す地図
左の壁の上には歴代中隊長の写真、警察予備隊当時の初代から数えて22人の写真が飾ってある
(オレの写真は一番向こう飾られるのかな?)つい先日、駐屯地出入りの写真屋に中隊長室用の写真を撮ってもらったことを思い出す
おそらくは旧軍出身者であろう厳つい顔立ちが並ぶ白黒写真、制服の何度か代わっており今の制服で移っている人は3名だけだ
(オレはこの中隊を良くできたのかな…?)と歴代中隊長の写真を眺めつつ、心の中でつぶやいた
机の右横に目を向ける。ホワイトボードに貼付けてあるのは中隊の隊員一同の顔写真だ
それぞれの名前と階級、所属や役職、特技などが下に書いてあり、磁石で貼付けてあるため臨時勤務や入校などの隊員は別のところにわけて貼っている
上から一人一人、思い出を振り返ってみる。運幹、先任、中隊本部一同、各小隊…全員の顔と声、そして様々な思い出が脳裏をよぎる
3小隊、赤城3曹のところで視線がピタリと止まった
陸自初の普通科中隊WAC、彼女を受け入れるとなった日のことを昨日のことのように思い出す
(あの時も大変だった…でも彼女も成長してくれたな)そしてさらに視線を動かす
最後の一人の顔を思い浮かべたところで、中隊長の表情が満足げなものに変わった
(誰一人失わなかったし、誰一人忘れているヤツはいなかった。大丈夫、自信を持ってこの中隊を申し遅れるな…)
そして一息ついた中隊長は、最後に残った仕事を片づけるべく書類の束に手を伸ばした
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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