新軍事ドラマ:「中隊本部」
どこにでもある(?)陸上自衛隊普通科中隊の日常を描く
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雪の進軍:その6(完)
「雪~の進軍、氷を踏んでぇ…ど~れが河やら、道さえしれず♪」
横一列に展開した仮設敵一行が喚声…というか歌声を上げながら陣地に向けて歩き始めた
「馬~は倒れる、捨ててもおけず、此~処は何処ぞ、皆敵の国…」この2日間で覚えた『雪の進軍』を大声で熱唱し、一行は陣地へ肉薄する
下は雪で走るのは困難、時々は伏せたり空砲を撃ったりもしながらも歌声は衰えない
「まま~よ大胆、一服やればぁ、頼~みすくなや、煙草が二本♪」
陣地からも空砲の音が響いてきた、と同時にあちこちから煙が上がる。迫撃砲や大砲の弾が落ちた状況を陣内の戦況現示班が発煙筒などを使って出し始めた
発砲音、火薬の臭い、陣地から響く号令や怒声に混じって、仮設敵一行の歌声が朝日に輝く雪原に響いていた

「…そろ~りそろりと、首締めかかる~どうせ生かして、還さぬ積り♪」最後まで歌ったところで陣地前に張ってある鉄条網近くまでたどり着いた
「よし…全員、突撃にぃ~…」近藤曹長が立ち上がって声を張り上げる、と伏せたり隠れたりしていた面々が同じように立ち上がった
「…すすめ~!」の号令とともに「うぉ~!」「どりゃ~!」「うりゃ~!」と意味不明の怒声を上げて、仮設敵一行が鉄条網に張り付いた
と同時に機関銃の連射音が響く
「よし、全員ハデに倒れろ!」曹長の声とともに「うぎゃ~」「やられたぁ~」と声をあげて倒れる面々
動き回って温まった体に冷たい雪の感覚が心地よい、青空を見上げた曹長の顔には自然に笑みが浮かんでいた

「状況終了~!」待ちに待ったその声が演習場に響いたのは、その直後だった

廠舎に到着して武器の手入れも終わり、ジャージに着替えてリラックスモードの隊員たち。そんな中、落ち込んだような顔で帰ってきたのは…
「井坂2尉、どしたの?」と近藤曹長が声をかける
何やら師団のお偉いさんに呼び出されていたらしい井坂2尉は「…ちょっと3部長に怒られまして…『歌って突撃なんてふざけんな!』だそうです」
「あ~そりゃスンマセン…」原因を作った曹長が頭を下げる
「しかしふざけてんのは師団もですよ。装備もないオレらに雪の中を走り回させるわ、時間は守らないわ…ちょっと言ってきますか?」
「あ~いや、いいです、いいです」と慌てて止める井坂2尉「説教されるのは幹部の仕事みたいなもんです。それに…」
とここで2尉は曹長に顔を近づけた「師団長にはバカ受けだったらしいです。あの人も元は北方出身ですから…」そう言って少し嬉しそうに笑った
「へぇ…やるなぁ師団長。大物ですね」と感心する曹長であった

「ま、やっと終わったんだし…飲みますか小隊長」「あ、そうですね」
誰かが売店から箱で買ってきたビール、焼酎、おつまみの乾きモノ、ストーブで温められる鍋など…宴会に必要な物が着々と準備されている
皆の手にビールや酒、飲めない者にはジュースや烏龍茶が準備されている
いつもの演習後の風景…どんなに長くて辛かろうとも、いつかは必ず終わる演習後の風景…がそこにはあった

「それでは演習お疲れさん…かんぱーい!」「かんぱーい!」

~完~
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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