新軍事ドラマ:「中隊本部」
どこにでもある(?)陸上自衛隊普通科中隊の日常を描く
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雪の進軍:その5
「…まだか、山崎…」「ぜんぜん、ウンともスンとも言ってこないですよ」
そう言って山崎士長は低いノイズ音を立てる無線機のマイクを振ってみせた
予定通り0430に廠舎を出発し、0530には目的の場所に着いた仮設敵一行。乗ってきた高機動車を森の中に隠して、暖房全開で待機中だった
だが無線で『エンジン音が陣地から聞こえる』と指摘されやむなくエンジン停止、徐々に熱を奪われた高機動車の中は気温がどんどん下がっている
まだ人が乗ってる分だけ外気よりは温かいが…「今、氷点下2度です」片桐2曹が腕時計に付いた温度計で気温を測った
「言うな、片桐…というか、いつまで待ってればいいんだ?」時計を見る近藤曹長、時刻は0700を差していた

予定であれば攻撃開始は0630、それまでに約1キロ先の攻撃地点まで歩いて前進するハズであった
しかし師団の企画統制から前進命令が来ない、どころか攻撃開始時間を30分以上過ぎてもまだ連絡がないのである
こちらから呼び出してもなかなか返答がなく、何度目かの呼び出しに応じた声は『別命あるまで待機』と不機嫌そうに言ったきり
「何か事故とかでもあったんですかね?」「だったら教えてほしいよな…」と震える手でタバコに火を付ける曹長
箱の中身は残り2本「頼みすくなや、煙草が二本…か」と口の中で呟いた

と突然、無線機のマイクにザッという音が入った。誰かがプレストークのボタンを押した音だ
次の瞬間『全仮設、速やかに攻撃を開始せよ』という声が飛び込んできた
「な…いきなりか!」と言いつつタバコの火を消し「全員下車!行くぞ」と声をかける
荷台で震えていた連中も銃を持って飛び出してくる。全員が降りたのを確認した曹長は前進の指示を出した

一列縦隊で無言のまま前進する仮設敵一行、15分ほどで攻撃地点までたどり着いた
「山崎、無線で到着したって報告してくれ」「もうしました、また『しばらく待機』だそうです」「…またか」
相手の陣地からは見えない窪地に全員が隠れる「何時から攻撃するのかまだわからん、いつでも動ける態勢で待機しておけ」と曹長は全員に指示を出した
しかし雪の中で待機するのはやはり寒い、特に普通の戦闘靴は雪の冷たさがダイレクトに足に来る。戦闘外被上下で体の方は温かいが、それでもやはり限界がある
「うぅ…寒い…」「まだかよ~早く動かしてくれ…」と足踏みをしながら震える隊員たち

そんな状態が30分ほど続いたろうか、やはり突然に無線機から『攻撃開始』の命令が下った
「…全仮設、喚声を上げて陣地に攻撃せよ…だそうです」とマイクを持った山崎士長が疲れたような表情で言った
「…」それを聞いた面々もガックリした様子を隠せない「これだけ待たせておいて…な~にが喚声だ」と誰かが言った
渋い顔の近藤曹長、しかし何かを思いついたように顔を上げた
「…喚声ってか、どうせなら派手にいこうじゃねぇか。なぁ?」そう言って曹長は、珍しいことにニヤリと笑った
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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