新軍事ドラマ:「中隊本部」
どこにでもある(?)陸上自衛隊普通科中隊の日常を描く
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雪の進軍:その3
「…って、こんな時間に寝れるかよっ!」「まだ夜も早いからなぁ」
なかなか寝付けない何人かが、灯りのついている一角に集まってきた
「なんだお前ら、寝れんのか?」とビール片手の東野1曹が声をかける。そこには補助官(検閲の評価を行う要員、通常は幹部)ドライバーや企画統制(仮設敵などの動きを統制する)などで来ている面々がストーブを囲み一席設けていた
「あ~ビール飲んでる!」「俺たちは検閲が終わるまで飲めないんですよ?」と不満そうな面々
「終わったらたっぷり飲んだらいいじゃねぇか、なぁ近藤?」「ま、2晩くらいは我慢しますよ」先に来ていた近藤曹長がタバコの煙を吐き出した
階級的には近藤曹長の方が上だが、入隊は東野1曹の方が早い。勤務中はともかくプライベートの場では先輩後輩の関係の方が強くなる
「しっかし、非道い演習だよな~」「まだ雪って降ってる?」「これ以上積もったらオレらの車じゃやばいね。タイヤにチェーン巻いたくらいじゃ動けねぇなぁ」
ストーブの周りに集まって愚痴をこぼす陸士たち。思いは陸曹も一緒だが、さすがに簡単に愚痴はこぼさない
「しかしこう雪が深いと、アレを思い出すな。なぁ近藤?」「アレって…あぁ『八甲田山』ですか」
昔、精神教育と称して連隊で上映された映画『八甲田山』高倉健主演のこの映画は日露戦争前にあった青森歩兵5聯隊の悲惨な遭難事故をもとに作られた
指揮権の混乱から中隊が遭難し、寒さのあまり発狂して死んでいく隊員たち…まさに悲惨の一言であったが、原作の小説はそれに輪をかけて悲惨な描写が続く
「まさに今日の状況はあんな感じでしたよ。思わず『雪~の進軍、氷を踏んで♪』と歌いたくなりました」と節を付ける近藤曹長
「その歌…どっかで聞いたことあるような…」「あれじゃね?『雪の進軍』って軍歌だよ」「ほら、教育隊の助教に軍歌好きの…」
何人かが顔を見合わせて「どんな歌なんですか?」と若い陸士が聞いてきた
「雪の中での行軍の様子を歌った軍歌だな。まぁ今の状況にピッタリな歌だよ」と片桐2曹は小さな声で歌い始めた

♪雪の進軍 氷を踏んで
 どれが河やら 道さえしれず
 馬は倒れる 捨ててもおけず
 此処は何処ぞ 皆敵の国
 ままよ大胆 一服やれば
 頼みすくなや 煙草が二本

曲を知っている者が途中から同じように歌い始める
雪の演習場に歌声が響いていった
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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