新軍事ドラマ:「中隊本部」
どこにでもある(?)陸上自衛隊普通科中隊の日常を描く
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初一本:その6
「いやもう、この数日で左手がこんなのに…」そう言って袖をまくり上げた佐々木3尉の腕が打ち身で真っ青に染まっている
「ま、初一本ばっかりじゃ仕方ないよね」と軽く流すのは、連隊本部情報幹部の前田1尉だ
初一本の集中錬成を初めて数日後、駅前の居酒屋に前田1尉を誘ったのは佐々木3尉だ
前田1尉は前に1中隊に勤務しており、その時に佐々木3尉(当時は幹部候補生陸曹長)が部隊配属されたのだ
その時以来の長い付き合いである

「しっかし銃剣道って…アレですよね」「ん?まぁ言いたいことはわかるよ。こんなの実戦で使えないってのは昔から言われてるからね」
ずい、と身を乗り出す前田1尉「でも幹部が言っていいセリフじゃないな。これも任務なんだから、率先垂範してやらなきゃいけないんだから」
「いや、わかってますけど…」と不満そうな顔の佐々木3尉
幹部とはいえ防大出のまだ26才の若者だ。銃剣道はそれほど楽しい訓練でもない「徒格(徒手格闘)の方に出たかったな…」と愚痴をこぼす
前田1尉は黙って空になった佐々木3尉のグラスにビールを注ぐ。きれいな泡が立ったところで口を開いた
「それでもさ、やらなきゃいけない事ってあるよ。任務があって部下がいる、じゃあ幹部のやることって何だ?」
「部下を連れて先頭に立ち任務を達成する…事です。でも正直、中隊のチームの中でオレが一番ヘタクソなんですよ」
銃剣道錬成隊要員が2人しか入れられないといっても、他の選手も元錬成隊や一時は銃剣道を囓ったことのある経験者ばかりだ
ほぼ全くの素人で始めたのは佐々木3尉と古賀1士だけ…しかし若い分、古賀1士の方が飲み込みが早い。一番下っ端ということで変な気負いやプライドもなく、素直に教えられたことを学んでいく
「そりゃ陸曹だもん、技術はあるさ。それが彼らの仕事とも言えるしね。それに向こうもお前に技術を期待はしてないと思うぞ」そう言って刺身に手を出してまた口を開く
「こういった時に曹士が幹部に期待するのは、小手先のテクニックじゃない…先頭に立つことだけだ」
「そんなもんですか?」
「そうさ。普段からバ幹部だの何だの言われてても、やっぱり幹部が先頭に立って頑張れば皆の気合いも入ってくるもんだ…まぁお前さんが嫌われてなけりゃ、の話だけどな」そう言って嬉しそうに笑った
「嫌われてはいない…とは思いますけど」自信なさげに言う佐々木3尉「いちおう、飲み会とかにも誘ってもらえますし…」
「合コンに誘われたらカンペキかもな。幹部は人気商売じゃないけど、嫌われるのがいい幹部ってワケでもないしね」
グラスに残っていたビールを飲み干して前田1尉は言った
「取りあえず気合い入れてやってみな。ここで踏ん張ったらいいことがあるかもしれんよ」
「ハァ…わかりました。やってみます」気の抜けたような返事をする佐々木3尉であった
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