新軍事ドラマ:「中隊本部」
どこにでもある(?)陸上自衛隊普通科中隊の日常を描く
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自衛隊法第83条:その20(完)
涼しい風が窓を全開にした高機動車の中を通り過ぎる
後部座席の一番後ろに腰掛けて、大島士長は離れてゆくスタジアムの白い屋根を見つめた
(けっきょく、最初から最後までこの災害派遣に振り回された気がするなぁ…)
1ヶ月前の地震発生の瞬間を、今でも鮮明に覚えている。待機要員で営内におり、のんびりゲームでもしようかと思った矢先に地震が起こった
それから先は出動してすぐに帰ってきて、また出動して食事を作って…何度か被災地と駐屯地を行き来して今日を迎えたのだった

「ご飯作って終わりでしたねぇ…」向かいの席に座る井上3曹に声をかける「ん?あぁ、そやなぁ」とこちらは上の空で携帯とにらめっこ
「そういや井上、例の合コンで知り合った子はどうなった?」とコレは運転席の田浦3曹。助手席は連隊本部の前田1尉だ
「…とっくに連絡途切れとるよ」「ハハッ、何してんだよ」と嬉しそうに笑う
「…あのなぁ…この1ヶ月でロクに休んでへんのに、どうこうできると思うか~?」「まぁ無理だろうな。不運だったと諦めな」
「ま、仕事だからしょうがないね~」とこれは前田1尉「ボクもさ、彼女がだいぶお冠でね…」
「前田1尉、彼女いはるんですか?ええねぁ~」「娑婆の人ですか?だったら合コンでも…」
と嬉しそうな陸曹二人を尻目に、大島士長は冴えない顔をしている

(なんか…「災害派遣」やった気がしないな…)
出動はしたもののすぐに帰隊、また現場に進出したものの、やったことと言えば飯炊きぐらいでしかない
あとは天幕を張ったり、野外風呂を炊いたり…
ヘリ隊のように被災者の救出をしたわけでもなければ、消防のレスキュー隊のように土砂に埋まった人を救助したわけでもない
地震発生直後に情報収集を行った偵察隊、被災者の医療援護を行った衛生隊、各地で土砂の除去などを行っている施設隊、慰問コンサートを行った音楽隊なんてのもいる
そんな中、自分のやったことは何だったのか…
「なんだかなぁ…」ボソッと呟いた

スタジアムの屋根はもう見えない。師団の他の部隊も先に帰っていった
高速道路のインターチェンジに向かう一般道で赤信号に捕まってしまった。連隊の他の車両は先に行ってしまっている
ふと外に目をやると、後ろに停まっている幼稚園の送迎バスの中から園児たちが手を振っているのが見えた
「元気だねぇ…」控えめに手を振り返す大島士長。すると今度は、歩道の方から小学生たちが手を振ってきた

子供たちだけじゃない
追い越しをかける乗用車から敬礼をする老人、ハザードランプを点灯させるトラック、バスの車窓から手を振る高校生たち
高速道路のインターに入ると、料金所のオジサンが「ご苦労さん!」と声をかけてきてくれた

「こうやって声をかけてもらうと『やった』って気になるよねぇ」何気ない前田1尉の一言
「…そうですね、そうですよね!」こうしてたくさんの人が自衛隊の車両を見ただけで手を振ってくれる、声をかけてきてくれる
ほんの少しだけど、自分の仕事に手応えを感じられた大島士長だった

~完~
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

コメント
この記事へのコメント
お疲れさまでしたo(^-^)o
ちょいとフライング申し訳ありませんでした。
災害派遣テーマ 最後のシーン、かなり感動・共感しました。
本来なら、災害派遣とか、実で行う行動なんか無い方が良いと言われた自衛隊(吉田茂 日陰者発言)
けど、時代はそれを許しません
今、自分が書いてる施設もそうですが、飯炊き・給水など今まで日陰だった者達の存在がどんどん、大きくなってます。
未来の陸自
いったいどのようになってるんでしょう…
2007/02/04 (日) 23:23:00 | URL | 三島作 #-[ 編集]
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